脱ひきこもりの体験談を読んでいただく上で、ご家族の方にお伝えしたいことがあります。
ひきこもっている間の心境や、脱ひきこもりのきっかけなどの体験談が皆さんの参考になれば・・・との思いから、こうしたサイトを立ち上げましたが、文章の中で、その間に起きたことのすべてが語られているわけではありません。
ひきこもり開始期~脱ひきこもりへ向けての時間の流れの中には、様々な心境変化、ご家族との関係の変化なども起きていきます。それらを語り尽くすことは簡単ではありません。けれど、投稿頂いた文章から、その一端を感じ取っていただくことはできると思います。実際の声を聞きながら、息子さん、あるいは娘さんの内面に起きていることに思いを馳せ、寄添って頂ければ、少しずつ変化の兆しが見えてくるのではないかと思います。
家族としてできることは、理解とサポート。
実際に動いていくのも、決断するのも、最終的にはご本人次第です。時には黙って見守り、時には話を聞き、そして求められればアドバイスや情報提供をし・・・そんな風に寄添いながら一緒にゆっくりと歩んでいくような姿勢が大切なのではないでしょうか。
下記に、時間の流れと状況についてまとめてみました。そちらも参考にしながら体験談を読んで頂ければと思います。少し主観的な表現もあるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。(ご意見があれば是非お寄せください。)
1.ひきこもり開始期
何かにつまずいたり、困ったり、傷ついたり・・・ひきこもりの直接的なきっかけになる出来事や、ストレスが限界を超えるなど、大抵は何らかの要因があってひきこもるという状況が起きていきます。その時に相談できる相手が側にいると良いのですが、そこまでの体験や、ご家族との関係性、友人関係などにより、誰にも相談できないという場合も多くあるようです。『相談しづらさ』はひきこもる方に比較的共通する悩みのようです。また、この時期はご自身が混乱の中にいらっしゃるケースも多く、自分自身の状況が良く分からないといった混沌とした心境になっている方も沢山おられます。「どうして動けなくなったのか自分にもよく分からない。」そんな言葉もお聞きします。『ひきこもる』という行為に、周囲の方も驚き、どうしたのかと詰問したり、本来行くべき場所へ行くように説得したり、叱責したり、双方でパニックになるという事態になったりもします。ひきこもりというのは、SOSの発信であったり、自分を守る一つの手段でもあります。できるだけ冷静に事態を受けとめ、寄添いながら状況の理解に努めてあげた方が、ご本人も安心して自分に向き合っていくことができるのではないでしょうか。
2.ケアが必要な時期
この時期は、多くの場合、癒やしを必要としていると考えられます。「何も話したくない・・・」そういう気持ちの時もあるでしょう。「本当は誰かに話を聞いて欲しい・・・」という方もおられるでしょう。また、それらを行ったり来たりと揺れ動く心境もあるようです。そんな気持ちの振れ幅にも、ゆったりと付き合ってくれる理解者が大切な存在になります。癒やしや理解を必要としているこの時期に多く見られるのが、周囲からの『本人の望まない干渉的な関わり』によるストレスの増幅です。「どうするつもりなんだ」「このままで良いのか」「そんなことでどうする」といった言葉が本人を追い詰めてしまいます。ケースバイケースですが、真面目で大人しく、言いたいことが言えないタイプの方は、「そんなことは分かっている」とますます心を閉ざしてしまうこともあります。話したくない気持ちも受けとめながら、聴く体勢を持ちつつ、今はケア(癒やし:愛をもって気づかい、心をこめて世話をすること)が必要な時期なんだな・・・と、大きな気持ちで受けとめてあげることができると、心を開いて、話をしてくれるようになるかもしれません。周囲がおおらかに受けとめることで心が安定すると、少し前向きな気分になれるということがあるようです。逆にストレスを受け続けることで、この段階でずっと足踏みが続くケースもあります。
3.自信を回復する時期
心が安定し少し明るい気分になったら、次に必要なのは動いていくための動機や、その行動を支える自信です。家の手伝いをしてもらうことも、とても良い体験になりますし、役割があるというのは『居て良い理由』になります。自信を回復するプロセスは小さなことだったりします。モチベーションが持ちづらい場合は、小さな報酬があっても良いかもしれません。行動と結果から、行動の意味を学ぶというステップも必要だったりします。体感はなにより大きな意味をもちますし、失敗するというプロセスも重要な経験です。人生には、分からないことや困ることが沢山起きていきます。そのたびに経験から学ぶことで、少しずつ前に進んでいくのではないでしょうか。失敗しないようにと先回りしすぎることは、本人の成長を阻害することにもなりかねません。また、あまりにも満たされた生活を与えてしまうことも、前に進んでいく理由や意欲を奪ってしまうかもしれません。生活の質を向上させて気持ちが前向きになるのを支えると同時に、小さな経験から学んだり、そんな行動を促すための要素も残しておく必要もあるのではないでしょうか。決断力というのも社会では必要になってきます。失敗体験や成功体験の中から、決断力を少しずつつけていく必要もあります。大げさに言えば、『明日××へ行く』というのも決断です。何でもかんでも親が決めてしまうと、決断する機会を奪ってしまいます。何分どころか、場合によっては何日も、決断するのに時間がかかる時もあります。それでもじっと決断するのを待つというのも、大切な時があるのです。
4.きっかけが必要な時期
気持ちも少し明るくなり、少しだけでも自信が回復し、前に向かって動き出す準備ができたら・・・。次に必要なのはきっかけです。このきっかけが又なかなか難しく、そこには沢山のストーリーが存在しています。聴いてみると、そんなことがきっかけになるのかと驚くこともあります。けれど、そのきっかけで動けるということは、かなり心が回復しているというベースがあってのことだと思うのです。まだケアが必要な段階できっかけがあっても、同じように動けるとは限りません。今、ご本人がどのような状態なのかをしっかりと見てあげることも必要だと思います。その上で、このサイトの投稿が参考になれば幸いです。